辞書の使い方。確かめるために引け。もしくは本を読め。

本文を書く
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文章を書くときの心得を調べると、
国語辞典を用意して絶えず引け、というのが頻出する。

しかし、そもそもどういうタイミングで引けばいいのか?
辞書とはどのように使うべきものなのか?

考えてみよう。

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辞書は「確かめるため」に使うもの

辞書は「言葉が思いつかないとき」ではなく
「思いついた言葉が正しいか確かめるとき」に使うものである。
ごくあたりまえだが、このことを分かっていないと話は進まない。

単語を見出しとして意味が載っているのが辞書である。
思いついてない、影も形もない言葉は引き出せない。

僕の場合、平均的に一話分を8〜10枚(3000〜4000字ぐらい)で書くが、
ほぼ1枚(400字)ごとに一度は引いている

辞書を引かずにわーっと書くのは初稿のときには基本だが、
二稿目以降ではじっくり辞書を引きながら書き直していかねばならない。

辞書を引くのは「この用法で合ってたかな?」とすこしでも不安に思った単語だ。

文章を書くときには「使い慣れた平易なことばをつかえ」というアドバイスがあるが、
ぼくは自信のない言葉でも、辞書を引きつつどしどし使うべきだと思っている。

ことばは、読むことで知り、書くことで血肉化していく。

辞書を引きながらおっかなびっくりつかったことばも、その次以降は自信を持って使える。
こうやって負荷を掛けながら書いていくことで、語彙の引き出しは増えるのだ。
筋トレと同じである。

言葉が思いつかないのは、読書量不足である

では、ことばがそもそも思いつかない――というときには、どうしたらよいのか?

厳しいことを言えば、単純な読書量不足である可能性が高い。

とにかくみっちり本を読み込もう。
コツは、口当たりのいい現代作家ばかりを読まないことだ。

現代作家はかなり制限された語彙で小説を書いていることが多い。

現代の読者が持つ語彙量がすくなくなっており、
それに合わせて書くと必然的に日常語彙ばかりになってしまうのだ。
また、とにかくスピーディに読めることが重要という価値観の読者が大半を占めるため、
一読して意味をくみ取りにくい単語は避けられるという傾向も、拍車をかけている。

小説に知らない言葉が出てきた時に「作者からの知識のひけらかし」を感じて屈辱と劣等感に苛まれる人がいる話
世の中は広い

↑こういう人びともいるらしい。おそろしいことに。

ただし、これに慣れてしまえば、書き手は多くの語彙を錆び付かせてしまう。
きみがまだ訓練の段階にあるのなら、作品を書いていくなかでも成長を図らねばならない。
第一線で活躍するプロたちに追いつきたければ、じぶんに負荷を掛けるのは必要な取り組みだ。

語彙を増やすために、近代文学・翻訳文学を中心に読んでいこう。

近代文学は、読む作家を選ぶ必要はない。
三島由紀夫や夏目漱石などのビッグネームを読むだけでも、語彙はぐんぐん増える。

翻訳文学の場合、おおむね1970年頃までに訳された小説を読んでみよう。
この辺までは語彙量がまだ豊富であるし、すこし古びた言い回しなどはかえって新鮮に感じるものだ。

単語ノートは作らなくてよい

読書をしながら単語ノートを作る――というアドバイスもあるようだ。
本を読みながら、見知らぬ単語を見かけたらノートに書き抜き、そこに辞書で引いた意味を転記することで、自分オリジナルの辞書をつくってしまうという手法である。

基本的には、やめた方がいい。

ノートをきれいにとるのは、自己満足だと認識しよう。
書き抜く作業で手を動かすのは脳の刺激になるかもしれないが、
ノートづくり自体が目的化してしまうと、読書の楽しみが二の次になる。

それに、ことばというものは文脈に配置されてはじめて、意味があるものだ。
単語だけを抜き取ったノートを使うことは、あまり意味がないし、機会も非常にすくないはずだ。

「この言葉なんだろう?」と思うたびに、ちゃんと毎回辞書を引いておけばじゅうぶんだ。

辞書内の引いたことばに丸をつけておくのは悪くない。
二度目引いたときにはよけいに印象に残ってくれる。

読書をするときには、テンポを削がないということを心がけよう。

受験勉強のように覚え込もうとしなくても、
読書で得たことばは、書いているときに自然と出てくるものだ。
安心して忘れてよい。

おすすめの国語辞典は?

おすすめの辞書は、と訊かれることもあるが、中型辞書ならなんでもいい

国語辞典選びは沼だから、あんまり調べすぎるとそっちが楽しくなってしまう。
いろんな辞書を買いあさって比べ始めれば、小説を書く時間などゴリゴリ削れていくだろう。
中型辞書を適当に選んで、適当に使っていこう。

ちなみに、ぼくは新明解国語辞典を使っている。
いわゆる「新解さん」である。
買ったときには主観バリバリ解説を楽しみにしていたが、現行版では割と抑えめになっているようで、使っているなかで笑いが漏れるようなことはほとんどない。
単なる有能な辞書として使っている。

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広辞苑はでかくて高いから止めておいたほうがよい。
あれは机の脇に並べておける大きさではない。
よほど大きな書斎を持っていない限りは、気軽に引きにくい代物だ。

また、広辞苑は古い順に語釈を並べてるから、頻出の用法よりも原義的なものに惑わされてしまう
(広辞苑では元々こういう意味なんだぞ、と主張する不毛な勢力もいる)

中型辞書を使っていて不満が大きくなってきたなら、初めて購入検討すればいい。
ちなみに、ぼくも持っていない。

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